ミリオンダラーベイビー 終盤30分の重み | 星空シアター

ミリオンダラーベイビー 終盤30分の重み

ポニーキャニオン
ミリオンダラー・ベイビー

◆レンタルDVDにて鑑賞。480P。5.1chドルビーデジタル音声。

◆劣悪な家庭環境に生まれ,13年もウエイトレスをしながら,客の残した食事を持ち帰り,小銭をためているのは,ボクシングチャンピオンになる夢があったからである。決して人に頼らず,甘えないその姿はさわやかである。彼女の真摯さとガッツは2人の男の心を動かしていく。


◆2人の男の教えを受けた彼女は,破竹の勢いで試合に勝っていく。どんどん高揚していく観る者の心。そのままカタルシスへと思いきや,最後に物語は突如方向を変えてしまう。この終盤の30分くらいがこの映画に賛否両論を巻き起こしたのは言うまでもない。


◆頸椎骨折で全身が麻痺してしまい,彼女のボクサー人生は残酷にも取り上げられてしまう。その彼女からさらに奪い取ろうとする最低の家族。夢を奪われた彼女にこれ以上生きていく理由は無くなってしまう。尊厳死を願う彼女。苦悩の末,それをかなえてやる老トレーナー。この老トレーナーにとてつもない重荷を背負わせて物語は終わる。最後の30分が,本作品を「生きる意味を深く問いかけてくる名画」へ結実させている。


◆尊厳死を扱った映画は,昨年「海を飛ぶ夢」を劇場で観た。これも軽妙さの中に,重いテーマを重ねたすばらしい作品であった。私たちが生きていくのは何のためなのだろうか。生きていくために生きていく他の動物と,人間との違いがそこにある。「海を飛ぶ夢」の飛行シーン,「ミリオンダラーベイビー」の病院のドアを開けて出て行くシルエットは一生忘れられない名シーンとして私の心に刻み込まれる。

ポニーキャニオン
ミリオンダラー・ベイビー 3-Disc アワード・エディション