星空シアター -4ページ目

エレクトラ 暗いシーン

◆レンタルDVDにて鑑賞。1080i。ドルビーデジタル音声。

◆アメリカ人の日本の武道・あるいは忍者への思い入れの強さを感じる。しかし,その流派の名前が「キマグレ」とは・・・。日本語がわかっていないというか。「気まぐれ」という言葉は良い意味には使われない。日本人が見ると,「あらら」となってしまう。


◆ヒロインのエレクトラは冷徹なアサシンなのに,情に厚く,また幼少時の体験で夢にうなされる,いわば精神が不安定な暗殺者である。この矛盾が感情移入を妨げる。


◆絶対的に強い敵との対決も,なぜか勝ってしまう。いいキャラのタトゥや毒ガス女も案外あっさり敗れてしまい,あれれ?ボブ・サップが一番リアルだったかな。


◆独自の作品世界を組み上げるに至っておらず,何より,エレクトラがセクシーでないところが,痛い。


◆暗いシーンが多く,3管式ではその雰囲気が良く出る。顔の半分影とか。

ヴィレッジ 役者はそろった・・・だが

ポニーキャニオン
ヴィレッジ

◆レンタルDVDにて鑑賞。1080i出力。ドルビーデジタルEX音声!

◆どんでん返しが持ち味の,Mナイト・シャマラン監督作品。本作もやはり,そのどんでん返しが最大かつ唯一の見せ場。


◆脇を固める役者がすごい。ウイリアム・ハート,シガニー・ウィーバー,そしてエイドリアン・ブロディ(キングコング)が重要な汚れ役を演じる。おっと,忘れていた。ホアキン・フェニックス。しかし,十分に彼らのキャラ立てができていない。特にシガニーはただのおばさんである。ホアキンも印象薄い。ああ,もったいない。


◆さらに,前半の物語は淡々としており,寝てしまう。100年前に観客を閉じこめながら,なおかつそこでもドラマが欲しい。どんでん返しのために映画のすべてがつぎ込まれてしまうのはあまりにもったいない。


◆音声はドルビーデジタルEXを奢り,サラウンドバックが加わるが,ことさらに感心するサラウンドシーンも記憶にない。(家のセッティングが,三管プロジェクターの後方にサラウンドバックスピーカーがあるので,かんがえなくちゃあいけないなあ)


◆どんでん返しは,むろん「へぇー」と感心させられるが,精神としては「逃避」である。後ろ向き。そこにヒロインは無意識に闘いを挑むわけだが,最後はまた元の鞘に収まり,「逃避」村は続く。人間,戦ってこその人生ではないか,その中にこそ成長がある。いや成長のために困難は用意されているのだ。

ダーク・ウォーター 救いのティム・ロス

角川エンタテインメント
ダーク・ウォーター

◆レンタルDVDにて鑑賞。1080i。DTS音声。

◆中田秀夫の秀作「仄暗い水のそこから」のハリウッド・リメイク。監督にウォルター・サレスが起用された。「モーターサイクル・ダイアリー」はとてもすてきな作品だったので,期待できる。


◆映像は暗く陰鬱。ざらざらとしたフィルムの質感があり,始終雨が降っているのに,何となくほこりっぽい感じがして不思議である。この暗い画面は,3管プロジェクターの得意とするところ。液晶の固定画素では厳しいだろう。


◆オリジナルとどうしても比べてしまうが,リメイク版は幽霊っぽさ,例えばエレベーター内のカメラに少し写るなどのオリジナルの見えそうで見えない「ぞっ」とする部分は少なく,ついにナターシャが姿を現したときも,お人形のようにかわいい生きた少女である。その辺はオリジナルの軍配が上がる。


◆リメイク版では弁護士のキャラクターを創出し,彼がジェニファー・コネリーを救う心強い味方を演じる。この弁護士の存在がほっとさせる。何と,ティム・ロスが演じている。ひげ面でメガネをかけており,背もそれほど高いと感じさせない(ティム・ロスは大男)ので,エンドタイトルが出るまで分からなかった。自然な演技に納得である。


◆音声はDTSを奢っており,音像が天上近くに定位することが何度かあり,「おおっ」と思わせた。クリアで迫力あるサウンドはさすがはDTSである。


◆テーマとしては「母親に捨てられた少女」という悲しい底流が流れており,それを見るものに強く印象づける。そんな子どもはたくさんいるのだろう。その悲しみは一生ぬぐえぬものだが,それを繰り返さぬ勇気を母ジェニファーは提示して終わる。「ずっと見守っているわ」と。

ウォーク・ザ・ライン 君に続く道 吹き替え無し!

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
ウォーク・ザ・ライン 君につづく道 特別編

◆レンタルDVDにて鑑賞。480P。5.0Ch再生。


◆パンク・ロカビリーの寵児ジョニー・キャッシュと彼が愛したジューンの物語。

◆刑務所の慰問演奏でジョニーの登場を待つ囚人達。刑務所の作業場でするどいのこぎりの刃をさわりながら,回想へと入っていく冒頭のすばらしさ。どこまでも続く綿花畑の緑いろの映像にジョニーの過去へと自然に誘い込まれていく。


◆長男を失い,ジョニーにはどこまでも冷ややかな父。その冷徹な目で見事に印象深いのは,「ターミネータⅡ」の液体金属ロボットT1000の彼ではないか。貫禄付いたなあ。


◆ジョニーのホアキン・フェニックス,見事アカデミー主演女優賞を得たジューンのリース・ウイザースプーンとも吹き替え無しの自分の歌とのこと。すばらしい。実際のジョニーやジューンの歌声は知らないが,何の違和感もない。「ムーラン・ルージュ」「オペラ座の怪人」と吹き替え無しで役者さんが歌う映画が多いが,どれも上手く感心させられる。ジョニーの奥深い低音とジューンの軽妙な歌いまわし。うまいなあ。


◆ウォーク・ザ・ライン,「まっすぐ歩け」の通り,何の虚飾もなくまっすぐに愛を表現するジョニー,そしてクライマックスのプロポーズの感動。こんな愛の表現もアリだ。

蝋人形の館 明るいホラーダークキャッスル

ワーナー・ホーム・ビデオ
蝋人形の館 特別版

◆レンタルDVDにて鑑賞。480P。ドルビーデジタル5.0ch音声。


◆R・ゼメキスの「ダークキャッスル」レーベルのホラー。B級ホラー映画の心を,A級映画の予算で制作するダークキャッスル。ゆとり故か,その画調は明るいホラーとなる。そこに賛否は分かれよう。


◆さて,「蝋人形の館」。原題は「House of Wax」だから,「蝋の館」が直訳。しかし,「蝋人形の館」の方がおどろおどろしくて正解。館全体が蝋でできており,それがクライマックスとなる。そういう意味では,原題の通りである。


◆キャストを知らずに,借りたがなんとヒロインはエリシャ(24のキム)カズバートではないか!一気に観る気が高まる。エリシャはタンクトップで汗だくで戦う女を熱演。クライマックスでビンセント(殺人蝋細工師)を説得しようとするところでは,頭のよさを垣間見せて,キムが重なったなあ。もちろん豊かな胸は今回も魅力的。


◆エリシャがニッパで人差し指を切られたり,かなりの残虐シーンが出てくるので,子どもには見せられない。


◆シャム双生児を切り離したことが悲劇の始まりであり,クライマックスで再び兄弟が重なり合うところは印象深い。主人公のカーリー(エリシャ)とニックも双生児であり,双生児が双生児の悲惨な事件に終止符をうつという構造はおもしろい。双生児というのは何か不思議な切り離せないラインでつながっているのかもしれない。思い出すのは,デ・パルマの「悪魔のシスター」。血のにおいたっぷりの中に,コミカルなラストが不思議だった。塚本晋也のズバリ「双生児」というのもあった。あまり,ぱっとしなかった。


◆久しぶりのホラーだったので,楽しめた。ヒロインの力が大きいかな。今後も明るいホラー「ダークキャッスル」に期待したい。

シンシナティ・キッド 驚異の高画質

ワーナー・ホーム・ビデオ
シンシナティ・キッド

◆BS-hi放送分をHDD録画してやっと視聴。

◆Hi-Vi6月号にて,堀切氏がマックイーンの額の汗にさわれそうなほど高画質,と書かれており,その記事に触発されてやっと視聴する。


◆マックイーンの澄んだブルーの瞳が吸い込まれそうなほど高画質。さらに,私が感じたのは,ロングショットでの遠くの細部まで分かるその映像の驚異である。冒頭の駅の線路の枕木まではっきり分かる解像度。ハイビジョンの凄さを感じるし,その元となるフィルム素材のすばらしさに脱帽である。


◆ストーリーはびっくりするほどシンプル。そこにニューオーリンズのジャズのにおいや奔放な女と純粋な田舎娘,富豪にディーラー達など一人一人のキャラクターが見事に描かれている。特に宿敵のポーカー師の不敵な面構えにはしびれる。


◆のし上がろうと必死の天才ポーカー青年のマックイーンはその鼻をぽっきり折られてしまうが,挫折が成長に結びつくのは必至。映画は,田舎娘との抱擁でハッピーに終わる。希望の残るエンディング。

ワーナー・ホーム・ビデオ
スティーブ・マックィーン・エッセンシャル・コレクション・ボックス (初回限定生産)

妖怪大戦争  天才子役

角川エンタテインメント
妖怪大戦争 DTSスペシャル・エディション (初回限定生産)

◆レンタルDVDにて鑑賞。1080i,DVI-D接続。DTS-ES音声!

◆オールスター映画である。それも妖怪として!それが最も楽しい企画だと思う。近藤正臣,キヨシロウさん,竹中さん,岡村・・・・。近藤さんはCMでカッパをやっていたので,2度目の妖怪役じゃなかろうか(笑)。

この贅沢さには満足。


◆ろくろっくび,雪女,アギ,河姫など女性妖怪がすてきでセクシー。


◆しかし,何と言っても天才子役神木隆之介の自然な演技は素晴らしい。「インストール」も先日のBSで見たが,これまた見事だった。本作では,一夏の大冒険を通して,成長し,村の仲間にも入れてもらえるというありがちの筋だが,そこが如実に浮き出てこないのが,逆におもしろかった。姉役の成海璃子は瞳が魅力的な女優さんなので,物語にもっと絡んで欲しかった。


◆マシン妖怪は暗めの画面の中で,CGっぽくない画像で好感が持てた。DTS-ES音声はそれなりに迫力がある。レンタルでDTS-ES音声まで入れてくれているのは太っ腹。


真実のために Vol5 なんとあの少女が・・・

ジェネオン エンタテインメント
イ・ヨンエ主演 真実のために DVD-BOX

◆レンタルDVDにて鑑賞。480P。32型モニターにて鑑賞。


◆新薬の人体実験に,医療費を無料にしてもらっている患者が供され,少女が死亡。事実を隠そうとする病院側との対決。


◆犠牲となる少女は,あれれ何とミン・グッキではないですか!ほとんど台詞もない役だが,このような端役を経て,主役のクッキを勝ち得たのであろう。


◆その「クッキ」だが,ついにキョンソン(ソウル)に上京してますますおもしろくなる。


◆「クッキ」の前の「LOST」も車いすのロックに奇跡が起こる。初めは分からないその奇跡が,だんだんにわかってくる話のつくりがうまい。これまた目が離せない。木曜日はドラマ三昧だ。あ,明日じゃん。

チョン ソンヒ, 田渕 高志
クッキ〈上〉

キャメロン・クロウに浸る 「エリザベスタウン」と「あの頃ペニーレインと」

パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
エリザベスタウン

◆「エリザベスタウン」をレンタルDVDで鑑賞。1080i。DVI-D接続。弟のドルフィンにて。

◆「あの頃ペニーレインと」をBS2をHDD録画で鑑賞。


◆キャメロン・クロウ監督作品に浸った黄金週間であった。両作品に共通するすばらしさは,そのBGMの選曲である。元ロック評論家のキャメロン・クロウ監督ならでは。さっそく,「エリザベスタウン」のサントラをタワーレコードでさがす。何と,1枚のCDに入りきらず,Vol2まで出ている。2枚とも購入。車の中のBGMとして最適である。「エリザベスタウン」「ペニーレイン」両作品に印象的なのはエルトン・ジョンの曲だ。「ペニーレイン」では,仲違いしたバンドメンバーがツアーバスの中でこのエルトン・ジョンの曲に合わせて全員が歌い出し,再び友情を取り戻すという感動的な場面で使われる。若々しいエルトン・ジョンの歌声は本当に素晴らしい。


◆キャメロン・クロウはヒロインを実に魅力的に描く。「エリザベスタウン」のキルスティン・ダンスト(実はこの人目当てでレンタルしたのだ)は,主人公を再生する女神として実に魅力的である。自作のCDとガイドブック。ファンタジックだが,だからこそ破滅して主人公に息をふきかえさせる。

 「ペニーレイン」ことケイト・ハドソンは自分探しの夢の途中だが,たゆたうようなつかみ所のない存在は魅力的だし,自らの道を見いだした時の笑顔も忘れられない。「ペニーレイン」では,主人公が自分の道を見いだすと共に,ペニーレインもまた人生の希望を見いだす物語だ。希望にあふれて終わる両方の物語はさわやかである。これは映画の一つの方向性である。


◆キルケゴールは言う。「死に至る病とは『絶望』である」と。キャメロン・クロウの希望あるエンディングに大賛成である。

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
あの頃ペニー・レインと デラックス・ダブル・フィーチャーズ

ミリオンダラーベイビー 終盤30分の重み

ポニーキャニオン
ミリオンダラー・ベイビー

◆レンタルDVDにて鑑賞。480P。5.1chドルビーデジタル音声。

◆劣悪な家庭環境に生まれ,13年もウエイトレスをしながら,客の残した食事を持ち帰り,小銭をためているのは,ボクシングチャンピオンになる夢があったからである。決して人に頼らず,甘えないその姿はさわやかである。彼女の真摯さとガッツは2人の男の心を動かしていく。


◆2人の男の教えを受けた彼女は,破竹の勢いで試合に勝っていく。どんどん高揚していく観る者の心。そのままカタルシスへと思いきや,最後に物語は突如方向を変えてしまう。この終盤の30分くらいがこの映画に賛否両論を巻き起こしたのは言うまでもない。


◆頸椎骨折で全身が麻痺してしまい,彼女のボクサー人生は残酷にも取り上げられてしまう。その彼女からさらに奪い取ろうとする最低の家族。夢を奪われた彼女にこれ以上生きていく理由は無くなってしまう。尊厳死を願う彼女。苦悩の末,それをかなえてやる老トレーナー。この老トレーナーにとてつもない重荷を背負わせて物語は終わる。最後の30分が,本作品を「生きる意味を深く問いかけてくる名画」へ結実させている。


◆尊厳死を扱った映画は,昨年「海を飛ぶ夢」を劇場で観た。これも軽妙さの中に,重いテーマを重ねたすばらしい作品であった。私たちが生きていくのは何のためなのだろうか。生きていくために生きていく他の動物と,人間との違いがそこにある。「海を飛ぶ夢」の飛行シーン,「ミリオンダラーベイビー」の病院のドアを開けて出て行くシルエットは一生忘れられない名シーンとして私の心に刻み込まれる。

ポニーキャニオン
ミリオンダラー・ベイビー 3-Disc アワード・エディション